怪文書07
事務所のみんなと卓球をする話
最近事務所全体が忙しかったこともあって、たまには何かイベントをやろうということになり、プロデューサー権限で卓球大会を開催することにした。なぜ卓球にしたのかというと、自分がある程度できてなおかつ事務所内の他の人があまりやってなさそうな球技ということで選んだ。これについては桃華に一発で見破られ、「自分が勝ちたいという魂胆が見え見えですわ……。そんなプロデューサーちゃまもかわいいのですけれど」というお言葉を頂いた。褒められたのか貶されたのか分からない。賞品をどうするかという話で少し揉めたが、賞品は「ちひろさんに常識の範囲内で好きなお願いを聞いてもらえる」ことと、副賞にぴにゃこら太のぬいぐるみがプレゼントされることになった。
いよいよ卓球大会当日。参加者はぼく以外に、李衣菜、奈緒、凛、きらり、美波、幸子、茜の7人が参加を表明し計8人になった。なんだかんだ人数が増えてしまったので、トーナメント戦での開催と相成った。対戦は、
①P vs 凛
②奈緒 vs 美波
③李衣菜 vs 幸子
④茜 vs きらり
という組合わせになり、準決勝は①と②、③と④の勝者がそれぞれ対戦する。
1試合目、凛との対戦。本気を出すまでもなく勝てたのだが、凛が試合中「ここで決めるよ――」とか「逃さないっ――」とか発言がいちいち""蒼""くて後ろで観てる奈緒と加蓮がめっちゃ吹き出しそうにしてたのが面白かった。
2試合目、多芸に秀でている美波が1枚上手だったのか、乱戦の末美波が勝利した。本当に何やらせても上手いし化け物では。
3試合目、「フフーン!卓球するボクもカワイイですね!」と言いながら試合に参加した幸子が李衣菜に完膚なきまでに叩きのめされる。負けた後も「運動ができなくてもボクはカワイイことに変わりありません!」と言っていて李衣菜がちょっと引いていた。
4試合目、ぼくは茜が勝つと予想していたが、きらりが手の長さを生かして「にょわーっ☆」って球を拾っていくので、きらりの粘り勝ちという結果に終わった。
ここで一旦休憩にしてお昼ご飯を食べることにした。コンビニおにぎりを食べていたら外に昼食を買いに行っていたらしい凛奈緒加蓮が帰って来て、買ってきたポテトをみんなにお裾分けしていた。ちょっと意味が分からない。当たり前の話だが匂いが部屋中に充満したので換気させた。自分たちが原因なのに暑いと文句を言ってくるのはやめてほしい。
そして始まる準決勝。ぼくと美波の対戦はぼくがあっけなく勝利したが、汗をかいた美波がセクシーで股間に大変悪かったので試合後の方がつらかった。アイドルのみんなにはこの動揺を隠し通せたと思っていたが桃華がすごくニッコリと意味ありげな視線をこっちに向けてきていた。特に何もされなかったが後々何があるか分からないので怖い。
李衣菜ときらりの対戦の時は用があって席を外していたのだが李衣菜が勝ったらしい。きらりよりは戦いやすい相手だと思うので気が楽だ、そうこの時は思っていた……。
いよいよ決勝戦、ここまで勝ち進んで来られたので、ぼくはちひろさんに「3日間仕事を代わってもらう」というお願いをして家で自堕落な生活を送るんだ、と意気込んでいた――――この時はまだ。
こちらがサーブ権を得たので、最初からバックスピンサーブをお見舞いしてあげることにした。しかしなんと打ち返されてしまい、運悪く逆サイドに飛んでいき打ちそびれてしまった。まさかこんな失点をしてしまうとは……。まぐれに違いない、そう思いたかった。
しかし現実は非情で、李衣菜相手になかなか点が取れない。そこで作戦を変更してカットとロビングを多用してミスを誘うことにした。ところが李衣菜のスマッシュ成功率が予想外に高く、打ち負けまくったので結局作戦を変えた意味はなく、あえなく惨敗した。
「ああああああ俺の3日間の休みがああああああ」
思わず叫んでしまった。
「プロデューサーさんはちひろさんに一体何をお願いしようとしたんだ……」と奈緒には呆れられた。
次の球技大会はもっとマイナーなゲートボールにしようと決意した。
ところで李衣菜のお願いって何なんだろう。そう思っていると、
「ちひろさん!プロデューサーさんに明日から3日間有休を取らせてください!」
おっ?これはもしかして図らずもぼくの狙い通りになるのではないか?(有休が使われることを除けば)
と思っていたら爆弾発言が飛び出た。
「あと、プロデューサーさんの家の合鍵ください!」
え。
「わかりました」
いいのかよ。いやダメでしょ。
「日頃のお礼にプロデューサーさんのお世話させてもらいますね!プロデューサーさんを絶対に振り返らせてみせます!」
いやもっとダメでしょ。
「子供だけは作らないようにしてくださいね~」
直球だなおい!ってか暗にヤるのはOKって言ってるじゃねえか!
この事務所大丈夫なのか…
この後李衣菜に3日間襲われまくったりリベンジマッチとして行ったゲートボール大会で今度は桃華に負けてまた襲われるのはまた別の話。