怪文書08
「ふぅ、やっと着きましたねー……お疲れ様でした」
李衣菜と北海道のイベントに出演した帰り、一旦事務所に戻ることにしたので、東京モノレールじゃなくて京急を使うことにした。
正直京急はロングシートだし網棚にスーツケースを載せれる以外アドがないけど電車で1本で戻れるし経費精算的にも楽だからしょうがないね。
なんてことを言ってると
「えー別にどれ乗ったって変わらないじゃないですかー」
って言われた。まあ普通の人そうだよね。
ということで事務所貸与のPASMOで改札に入って階段を下りるとまもなく電車が参りますという放送が流れた。どうせ京成の3400あたりが来てキレることになると思っていたら1灯だけのヘッドライトがトンネルの向こうから姿を見せた。
つい感動して「おおおおおおおおマジかすげえ」と叫んでしまった。
「神崎さんどうかしましたか!?」
と李衣菜に心配されてしまった。申し訳ない。
ということでまさかのまさか、C-Flyerに乗ることが出来てしまった。初めてでちょっと感動。
李衣菜は「あっこの電車前向きの座席あるんですね!」と喜んでいる。李衣菜が喜んでくれて嬉しい(こなみ)
とりあえずスーツケースを網棚に上げて、オタクだから窓側に座りたかったけど通路側にアイドルを座らせるのも問題がありそうなので泣く泣く通路側に座る。この車両がいかに珍しい存在であるかを教えようと思ったけど多分理解されないからこの車両が珍しいことだけ教えた。
「へぇ~、ロックな車両なんですね!」
「公衆電話とかもついてたしね」
と言うと、
「公衆電話って、あの?」
と返してきた。一応存在は知ってるらしい。
ここから話を広げると切りが無いし何より北海道の帰りで疲れてるから寝たい。
最初は羽田空港からクロスシートに座れる喜びを2人で感じていたけど、既に大鳥居あたりで「これちょっと椅子固くないですか?」と李衣菜がお気持ちを表明し始めた。実は俺も穴守稲荷あたりから既に限界を感じ始めている。いい感じの座る位置を探していたとき、突然、「こういう体勢だと楽です」と言いながら李衣菜がこっちにもたれかかってきた。
「ちょっとこういう所では……」と窘めたけど気にする様子も無く、終いには俺の腕に抱きつくような形になった。いやちょっとそれはマズいって。
「だって神崎さんこういうところでポイント稼いどかないと振り向いてくれないじゃないですか……」
「え?何て?」
「べっつに何でもありません~~」
120km/h同士ですれ違ってる時って会話できないよね。
恥ずかしい空気を乗せた列車はエアポート快特だったこともあって事務所の最寄りまで結構早めに着いた。やっぱり京急だったんじゃないすかね。
「いやーいい車両に乗れてよかったね~」
「そーですねー」
李衣菜がちょっと冷たい気がする。
かと言って特に何が悪いのかも分からないしフォローのしようもないと思ってそのまま流れで解散したら翌日から事務所のみんなに生暖かい目で見られるようになったり李衣菜からのアタックが激しくなったのはまた別の話。
~この怪文書は千葉ニュータウン鉄道の提供でお送りしていたりはしません~